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吉村昭さんの「星への旅」を読んで

「いきなり長編小説にチャレンジするよりも、一文一文勝負の短編小説から入った方がまだ書きやすいだろう」

特に根拠は無い。
自分で何となくそう思うだけだ。

そんな思いから、今短編集を読んでいる。
もちろん「この人は」と思える作家の短編集だ。

小説の審査委員の方々の言葉をネットで拾っていると、「文章表現を重視する」という方が多い。
あと、「読者からお金を取るに足りるだけの価値があるか」という意見。

当たり前だ。

小説を買っていただき、なお且つ固定の読者になってもらえる為に一生懸命書くわけだ。
それくらいは分かる。

その上で思うことは、万人受けする小説家にはなかなかなれないと思うが、「つまらない」とは絶対言われたくない、ということ。
せいぜい、

「よく書けていると思うけど、なんとなく好かないな」

くらいで留めておいてもらいたい、これは書き手側のエゴだが。
どこのBook Offにもよく見かける「常連本」にもなりたくない。
もし見かけてしまったら、相当ショックだろうと思う。

今まで長編ものを多く読んできた。
初めて読む作家の作品は決まって「一番の長編もの」を選ぶ。
理由は、

「作家にとって一番の長編作品は力作なはず」

という私の勝手な判断だ。
力作だから面白いはずだと。

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吉村昭さんの「仮釈放」を読んで

吉村昭さんの作品を読むと、いつも城山三郎さんを思い出す。
フィクションの匂いをそぎ落とした、あくまでも事実を積み重ねていくあの語り口。
今も私の中でノンフィクションの最高傑作は、城山三郎さんの「落日燃ゆ (新潮文庫)」だ。

史実を忠実に表現するために、自身が納得するまで取材を繰り返す。
城山三郎さんも今回ご紹介する吉村昭さんも同じスタンスだ。

主人公の口を通して語られる話に、独断的な要素はほとんど無い。
書き手の主観を殺して、登場人物と共に広がる光景、出来事、それを受けてどう感じたのか、が緻密に語られる。
主人公が置かれている時代、その当時の世相が信じられないくらいきめ細かく描写されている。
読み進めながら、自分も登場人物と肩を並べて歩いているような気になる。

そして事実の積み重ねにもかかわらず、読後に味わうあの深い感動。
これを味わうと、下手なフィクション作品など読めなくなる。 続きを読む 吉村昭さんの「仮釈放」を読んで