新人文学賞を狙う

作家になる為のもっとも確実な方法は、各出版社が創設している「新人賞」を取ることだと思う。
今でこそネット小説など、自由に書いている若い作家さんがたくさんおられるようですが、やはり時間をかけて創作した小説を、文壇の方々に評価をしてもらうこと、これに尽きると思うんです。

特に新人賞というものは、作品の評価は勿論ですが同時に「作家の発掘」を主眼としている要素が強いんです。
従って、まずは出版社の「お眼鏡に叶いお墨付きをもらう」ことで、順調な作家生活のスタートを切りたいと誰しも思うわけです。

特に、「五大文芸誌」が主催している以下の新人賞を目指すのが売れっ子作家への定石だと言えます。
新人賞名と主催する出版会社名、今までの開催回数をご紹介します。

どれも大手出版社が主催する、有名な「新人賞」です。
私にしてみれば、どれも目指すに高い難関ハードルだと言えます。
しかし毎年誰かが選ばれるんです。
チャンスはあるはずです。

上記五大文芸誌が主催する新人賞に共通して言えるルールは、

未発表作品に限る

です。
つまり「今までネットなり自費出版なりで公表されたことのない作品」であるということです。
ということは、Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシングなどで世に出した作品なども対象外となります。

自分自身のブログでちまちまと発表している小説などもダメだと思います。
選考時期が違うことを利用して、6月の「文學界新人賞」に申し込んだ作品を翌3月の「小説すばる新人賞」にも申し込むなどという行為も禁止です。

自分の作風にあった文学賞を1点に絞り、その選考委員に勝負を挑む気持で申し込む必要があります。
ただ今の段階で、どの新人賞が自分の作風に合っているかなど、分かりようもありませんね。
当然「傾向と対策」を練らないといけないかと思います。

要は、

  • 選考委員のプロの作家さんがどのような考えを持っているのか
  • どんな作品を求めているのか

各新人賞の募集要項を掲載したウエブサイトで、過去の受賞作品の傾向を調べる必要があります。
以下に、私が調べた内容を簡単にまとめてみました。

▼▼▼

文學界新人賞

  • 【主催】文藝春秋
  • 【掲載雑誌】文學界
  • 【締切】6月30日/12月31日(年2回)
    ※11月号/5月号にて予選結果発表
  • 【枚数】400字 100枚程度
  • 【賞金】50万円(文學界へ掲載)
  • 【開催回数】119回
  • 【資格】応募原稿は未発表作品に限る
  • 【選考委員】角田光代、花村萬月、松浦寿輝、松浦理英子、吉田修一
  • 【求められるもの】既成にとらわれぬ清新な作品

群像新人文学賞

  • 【主催】講談社
  • 【掲載雑誌】群像
  • 【締切】2014年10月31日
  • 【枚数】400字 70〜250枚
  • 【賞金】50万円、群像に掲載
  • 【開催回数】58回
  • 【資格】応募原稿は未発表作品に限る
  • 【選考委員】青山七恵、高橋源一郎、多和田葉子、辻原登、野崎歓

文藝賞

  • 【主催】河出書房新社
  • 【掲載雑誌】文藝
  • 【締切】2015年3月31日 (当日消印有効)
    ※発表は雑誌「文藝」2014年冬季号誌上
  • 【枚数】400字詰原稿用紙100枚以上400枚以内
  • 【賞金】賞金50万円(雑誌掲載の原稿料含む)
  • 【開催回数】51回
  • 【資格】応募原稿は未発表小説原稿に限る
  • 【選考委員】藤沢周、保坂和志、星野智幸、山田詠美
  • 【求められるもの】既成の枠にとらわれない、衝撃的な作品を

新潮新人賞

  • 【主催】新潮社
  • 【掲載雑誌】新潮
  • 【締切】2015年3月31日
  • 【枚数】400字 250枚以内
  • 【賞金】50万円、新潮に掲載
  • 【開催回数】47回
  • 【資格】応募原稿は未発表作品に限る
  • 【選考委員】川上未映子、桐野夏生、中村文則、福田和也、星野智幸
  • 【求められるもの】登場人物に存在感があり、人間描写に優れた作品

小説すばる新人賞

  • 【主催】集英社
  • 【掲載雑誌】小説すばる
  • 【締切】2015年3月31日
  • 【枚数】400字 200〜500枚
  • 【賞金】200万円
    ※受賞作は集英社が必ず単行本化する
  • 【開催回数】26回
  • 【選考委員】阿刀田高、五木寛之、宮部みゆき、北方謙三、村山由佳
  • 【資格】応募原稿は未発表作品に限る
  • 【求められるもの】「面白い小説」であること
    ミステリ、青春、恋愛、時代、SFなど、ジャンルは問わず

▲▲▲

「求められる作品」に関しては、余りにざっくりで今ひとつ特徴が掴み切れておりません。
これは繰り返しになりますが、過去の受賞作品を上記サイトからアクセスし、その傾向を自分で分析してみる必要があります。

今は2014年5月19日です。
今から準備して6月の「文學界新人賞」の締め切りは間に合いません。
来年の3月締め切りの新人賞をターゲットにして、挑戦するのが無難かと思います。

錚錚たる選考委員の顔ぶれです。
相手にとって不足無しかと(笑)。

最後に文藝春秋で編集者として活躍してきた高橋一清さんの著書あなたも作家になれるから、私達作家を目指すものにとって、大変参考になる記述の紹介があったので、皆さんと共有させていただきます。



この「あなたにも作家になれる」からの抜粋で、「文學界新人賞」を目指すための傾向と対策を紹介をされています。
しかし「文學界新人賞」に限らず全ての新人賞を目指す方々に合ったアドバイスだと思いますので、ここで皆様にご紹介しておきます。
下段あたりに元文藝春秋編集者の高橋一清さん「新人賞を通過するための条件」というタイトルで書かれた記述です。

▼▼▼

  • 出し惜しみしている作品は弱い
    これを書いたら自分は終わりだ、私の全てだ、書き終わったら死んでもいい、明日がなくてもいい。
    それくらいの気持ちで取り組んで欲しい
  • ストーリー構成・伏線・タタキ
    一行目を「雨が降っていた」で始めたとして、以降、その雨が一度も出てこず、(中略)「はて、あの雨は何で登場したわけなのだろう」と、首を傾げさせながら読み続けさせるような作品は、そもそも読んでいて、作品の世界の中へ入り込めなくなる。
    また、登場人物が、急を要して、どこかへ駆けつけるとき、それをはばむように、いきなり雨を降らせて足止めを食らわせ、物語を盛り上げるというのも、作為的過ぎて、作者のご都合主義のように読めてしまう。
    とはいえ、どうしてもそこで雨の場面を入れたくなった、話の中で必要になった、(中略)その場合は「タタイテおく」。雨が必要ならばその伏線となるようなものを前に遡って入れておく。これを「タタイテおく」と小説書きや編集の技術用語で呼ぶ。(中略)
    そして、人が突然死ぬといった、偶然を伴い、かつ劇的な効果をもたらす出来事を入れたいときは、できるだけ前の方で伏線の場面を出しておく。
    予兆すら感じられなかったシーンが後半になっていきなり出てくるというのは、これもご都合主義で、物語を無理に終わらせるために入れたかのように読めてしまうからだ。
  • あなたの作品が最終選考で落ちる理由
    文そのもので人をうならせて受賞できる新人というのは、「20年に1人出るか出ないか」ぐらいの滅多にない確率なのだ。
    勝負は題材にある。
    それも、選考委員にとっての未知の世界がそこにめくるめいているかどうか、なのである。
  • 書き終えるまでは「うぬぼれ」、読み返すときは「謙虚」に
    書き終えた原稿はすぐには読み返さない。一週間ほど寝かせておく。(中略)
    原稿に休んでもらっている間に、できるだけ素晴らしい名作を読んでおく。自分が書いたものが野球小説なら、野球小説のジャンルで金字塔とされているような先行作を読む。同じようなテーマを扱っているものを一作でも二作でも多く読み切る。(中略)
    読むときは先輩の作家がどう書いているか、その上手いところ、難所を切り抜けたところなどに注意して読み進む。
    (中略)
    こうして直したあとも、すぐには出版社へ送らない。(中略)
    さらに一週間ほど寝かせておいて、もう一度読む。(中略)
    それを二回、三回と繰り返す。

▲▲▲

「新潮新人賞」などは、純文学の為の賞ですので、やはりかなり緻密な人間描写を求められるようです。
その際、登場人物の心理描写や風景紹介の文体で、読者をうならせようと考えて書いたとしても、そんな簡単に一文一文で立ち止まらせて、次のページをめくらせないくらい引き付ける日本語技術を持った新人は「20年に1度」くらいしか現れないそうです。

勝負は題材だと。

選考委員にとっても斬新なテーマが必要だと高橋さんは言われています。
しかし、どうでしょう。
テーマの奇抜さに走り続けていると、日常からかけ離れたテーマばっかりの作品で占められてしまう気がします。

日常に潜む非日常な世界

こんな切り口でテーマを探っていけば良いのかと思います。
最後に、「八日目の蝉」で有名な直木賞作家、角田光代さんの言葉をご紹介しておきます。
文學界新人賞の選考委員をされている角田光代さん。
その選考基準を以下のように話されています

読み手にじかに触れ、内にとどまる小説というのは、奇抜なものでも斬新なものでもないと思っています。
「このことをどうしても書きたい」
「自分が書かねばならない」
「今書かないわけにはいかぬ」
という思いから立ちあらわれる小説こそが、読み手に触れる力を持つ、かつ、あたらしい小説だと私は思います。
そんな強くてあたらしい小説をぜひ読ませてください。


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